東洋医学が初めての方にも分かるように
ご紹介します。
「ちゃんと食べているのに、
なんだか疲れやすい」
「雨の日になると、身体が重く感じる」
「むくみやすくて、
なんとなくやる気も出ない」
そんなことはありませんか?
食事もとっているし、
特別なことをしたわけでもない。
それなのに、
身体が思うように動かない。
東洋医学では、
こうした一見バラバラに見える変化を、
「脾(ひ)」という働きを通して
考えることがあります。
今回は五臓の3つ目、
「脾」についてご紹介します。
「脾」と聞いても、
あまり馴染みがないかもしれませんね。
現代医学の脾臓は、
血液や免疫に関わる臓器です。
でも東洋医学の
「脾」は、
脾臓という臓器だけを
指しているわけではありません。
大きく分けると、
◉ 食べたものから、
身体を養うものを生み出す
◉ 水分を必要なところへ巡らせる
という大切な働きがあると考えます。
私たちは毎日、
食べたり飲んだりしています。
でも、
食べたものがそのまま「元気」に
なるわけではありませんよね。
身体の中で
消化・吸収され、
必要なものへと変わっていく。
東洋医学では、
その働きの中心に
「脾」
があると考えてきました。
東洋医学では、
◉ 「脾は運化を主る」
といいます。
「運化(うんか)」とは、
食べ物や飲み物から
身体に必要なものを生み出し、
運び巡らせる働きのことです。
以前ご紹介した
「気・血・津液」も、
食べたものから生み出されるもの
と深く関係しています。
気は、身体を動かす力。
血は、身体を養うもの。
津液は、身体を潤す水分。
脾は、
こうした身体を支えるものを
生み出すための、
大切な土台なんです。
だから東洋医学では、
食事の内容だけでなく、
「食べたものを、
身体がきちんと受け取れているかな?」
ということも大切にします。
朝ごはんを食べたのに、
午前中から身体が重い。
しっかり寝たはずなのに、
なんとなく元気が出ない。
そんな日もありますよね。
東洋医学では、
脾の働きが弱まると、
食べたものから十分に
気を生み出しにくくなると考えます。
そのため、
・疲れやすい
・食欲が落ちる
・食後に眠くなりやすい
・なんとなく力が入らない
などがみられることがあります。
もちろん、
「疲れやすい=脾が悪い」
という意味ではありません。
疲れには睡眠不足や貧血、
ほかの病気など、
さまざまな原因があります。
東洋医学でも、
ほかの臓との関係を含めて
考えていきます。
ここからが、
東洋医学の面白いところです。
脾は食べ物だけでなく、
水分の巡りにも関係すると考えます。
水分が必要なところへ巡り、
不要なものは身体の外へ出ていく。
その働きがうまくいかなくなると、
・むくみやすい
・身体が重だるい
・お腹が張る
・軟便になりやすい
などがみられることがあります。
東洋医学では、
こうした水分の停滞を
「湿(しつ)」
と呼ぶことがあります。
食欲とむくみ。
一見関係がなさそうですが、
東洋医学では「脾」
を通してつながってくるんです。
「雨が降る前になると、身体が重い」
「湿気の多い日は、なんとなく調子が悪い」
そんな経験はありませんか?
東洋医学では、
湿気の多い環境も
身体の状態に影響することがあると
考えます。
特に、
水分の巡りが滞りやすい状態では、
湿気の多い時期に身体の重さやだるさを
感じることがあります。
もちろん、
雨の日の不調には気圧の変化や睡眠、
生活環境など、
さまざまな要因が関係します。
でも東洋医学では、
「外の湿気と、身体の中の水分の巡り」
という視点からも、
身体を見ていきます。
やらなければいけないことは
分かっているのに、
なかなか身体が動かない。
「今日は何もしたくないな……」
そんな日もありますよね。
東洋医学では、
気が不足したり、
身体が重だるくなったりすることで、
気持ちまで動きにくく感じることがあると
考えます。
身体が疲れているときに、
気持ちまで前向きになれない。
反対に、
身体が軽くなると、
少し何かを始めたくなる。
そんな経験はありませんか?
身体とこころは、
別々に動いているわけではないのかも
しれません。
前回、
心と関係する感情は
「喜」
とご紹介しました。
脾と関係するのは、
「思(し)」=思い悩むこと
です。
仕事のこと。
家族のこと。
これから先のこと。
考えなければいけないことが多いと、
食欲が落ちたり、
お腹の調子が悪くなったりすることが
ありますよね。
東洋医学では、
思い悩みすぎることが
脾の働きに影響すると考えます。
もちろん、
考えることが悪いわけではありません。
考え続ける時間と、
少し頭を休ませる時間。
どちらも大切なのかもしれません。
忙しい日が続くと、
食事を急いで済ませる。
スマートフォンを見ながら食べる。
疲れているのに、つい食べすぎてしまう。
そんなこともありますよね。
東洋医学では、
脾を健やかに保つために、
食事や生活のリズムを大切にします。
温かいものを食べる。
よく噛んで、ゆっくり食べる。
食べすぎや飲みすぎを控える。
無理のない範囲で身体を動かす。
特別なことではありませんが、
毎日の積み重ねが身体を支えてくれます。
何を食べるかだけでなく、
どんなふうに食べているか。
そんなことにも、
少し目を向けてみたいですね。
東洋医学の
「脾」を知ると、
食欲、
疲れ、
むくみ、
身体の重さ、
気持ちの変化。
一見バラバラに見えるものが、
少しずつつながって見えてきます。
だから鍼灸でも、
症状がある場所だけを見るのではなく、
脈やお腹、食欲、便通、睡眠、
日々の生活なども確認します。
そして、
「なぜ今、この人の身体に、
この症状が現れているんだろう?」
と考えていきます。
食べること。
身体を動かすこと。
休むこと。
そのひとつひとつが、
私たちの身体を支えています。
最近、
なんとなく疲れやすいなと感じたら、
「ちゃんと食べているかな?」
だけでなく、
「身体が元気を生み出せるような
毎日を過ごせているかな?」
と、少し振り返ってみるのも
いいかもしれません。
次回は五臓の4つ目、
「肺って、呼吸だけじゃないの?」
についてご紹介します。
東洋医学の
「肺」は、
呼吸だけでなく、
気や水分を全身に巡らせる働きにも
関係すると考えます。
呼吸、皮膚、鼻、風邪のひきやすさ。
一見違うように見えるこれらが、
なぜ「肺」
という考え方で
つながってくるのでしょうか?
次回も、
身体の中にある意外なつながりを
見ていきましょう。